溶接後加工を伴う部品加工で起こりやすい問題
部品加工を依頼するとき、切削加工だけで完成する部品と、溶接してから機械加工を行う部品では、依頼時に確認すべき内容が大きく異なります。特に、板材や角材、パイプ、機械加工部品などを溶接して構造体を作り、その後に穴、端面、取付面、軸受部などを仕上げる製品では、溶接による歪みと加工基準の変化を考慮しなければなりません。
図面上では各寸法が正しく設定されていても、溶接によって部材が収縮したり、角度が変化したり、面が反ったりすると、その後の加工で狙った寸法関係を作れなくなる場合があります。例えば、左右に離れた二つの軸受穴を同軸に仕上げたい製品では、穴を部材単体で完成寸法まで加工してから溶接すると、溶接後に穴同士の位置や軸心がずれる可能性があります。
一方で、すべての加工を溶接後に実施すればよいとは限りません。素材状態で加工した方が固定しやすい形状や、溶接後には工具が届かなくなる部分もあります。大型の溶接構造物では、完成状態では加工設備に載せられないこともあります。そのため、部品加工を依頼するときは「溶接する」「加工する」という作業を別々に考えるのではなく、材料準備から溶接、歪み修正、機械加工、検査までを一つの工程として検討することが重要です。
溶接後加工で問題になりやすいのが、どこを基準に寸法を作るかという点です。溶接前の素材端面を基準として寸法を設定していても、その端面自体が溶接で変形すれば、仕上げ後の寸法関係が不安定になります。最終製品として重要なのが取付面同士の距離なのか、穴中心と底面の位置関係なのか、外形寸法なのかによって、適切な加工方法は変わります。
また、公差だけを厳しく指定しても品質が安定するとは限りません。重要なのは、その公差を何を基準として測定し、どの工程で作り込むのかを明確にすることです。溶接構造物では、溶接部そのものよりも、溶接後に加工する面や穴の位置関係が機械の組立精度を左右することがあります。
部品加工の依頼で溶接後加工を成功させるには、完成図面を加工会社へ渡すだけでは不十分な場合があります。どの部分を溶接前に加工し、どこを溶接後に仕上げるのか、何を最終基準とするのか、どの程度の歪みを想定して加工代を残すのか、どの段階で検査するのかまで共有する必要があります。
ここからは、溶接後加工を依頼するときに特に重要となる5つの確認事項を具体的に解説します。
確認事項1|溶接前と溶接後の加工範囲を明確にする
最初に確認したいのが、どの加工を溶接前に行い、どの加工を溶接後に行うかです。この区分が曖昧なまま部品加工を依頼すると、溶接後の歪みによって仕上げ済み部分の精度が失われたり、逆に必要な加工を後から行えなくなったりする可能性があります。
溶接前に加工するメリットは、単品状態でワークを固定しやすく、工具もアクセスしやすいことです。板材の穴加工、溝加工、開口部加工、部品同士を位置決めするための形状などは、溶接前の方が効率的に加工できる場合があります。特に溶接後に箱形や筒形になる構造では、内側に工具を入れられなくなる可能性があるため、事前加工が必要です。
ただし、完成時に高い位置精度が要求される穴や取付面については注意が必要です。溶接前に完成寸法まで仕上げると、溶接熱による収縮や角度変化によって、完成状態での位置関係が公差から外れることがあります。そのため、溶接前には下穴や荒加工までとし、溶接後に最終加工を行う方法が適している場合があります。
例えば、左右二枚の板に同軸穴が必要なブラケットを考えます。左右の板をそれぞれ単体で完成穴まで加工してから溶接すると、板の傾きや間隔が溶接によって変化し、二つの穴が完全には一致しなくなることがあります。一方、溶接後に構造体全体を基準として二つの穴を一工程で加工できれば、完成状態での同軸性を確保しやすくなります。
取付面も同様です。モーター、軸受、ガイド、治具などを取り付ける面では、単独の平面度だけではなく、相手側取付面との平行度や直角度、穴との位置関係が重要になる場合があります。こうした面は、溶接後にまとめて加工することで、最終組立状態に必要な幾何関係を作りやすくなります。
一方、溶接前加工と溶接後加工を細かく分けすぎると、段取り回数が増え、管理も複雑になります。そのため、依頼時には単に「高精度だから後加工」と考えるのではなく、完成品として要求される機能から逆算することが重要です。
加工会社へ依頼するときは、図面上で仕上げ面、溶接後加工面、荒加工状態で残す部分などを区別できるようにしておくと認識違いを減らせます。また、完成図だけでは工程意図が分かりにくい場合には、溶接前部品図と溶接後加工図を分ける方法も有効です。
重要なのは、「最終的にどの寸法関係を保証したいのか」です。溶接前の部品単体精度を高めることより、溶接後の完成状態で必要な精度を確保することを優先すべき箇所も少なくありません。部品加工の依頼では、この考え方を加工先と共有することが最初の重要な確認事項になります。
確認事項2|仕上げ加工の基準面と基準位置を決める
溶接後加工で特に重要なのが加工基準です。加工基準が曖昧な状態では、個々の寸法が公差内に入っていても、組立時に必要な位置関係が合わないという問題が発生することがあります。
溶接構造物は、切削加工された単一部品と比較して、素材外形をそのまま高精度な基準として利用しにくい場合があります。板の切断誤差、素材寸法のばらつき、溶接による収縮、歪み修正などが加わるためです。そのため、溶接後にどこを基準面として加工するかをあらかじめ決めておく必要があります。
例えば、装置のベースに使用する溶接フレームで、上面に複数の機器を取り付ける場合を考えます。この場合、外周寸法よりも、機器を取り付ける上面の平面性や、取付穴との位置関係の方が重要になることがあります。その場合には、溶接後に上面を仕上げ、その面を加工基準として穴位置を作る工程が考えられます。
反対に、既存設備へ取り付ける部品であれば、相手機械と接触する面や位置決め穴を最終基準とする必要があるかもしれません。単純に図面左下を寸法原点として指定するだけではなく、実際に何と組み合わされる部品なのかを意識して基準を設定することが大切です。
基準面を決める際には、加工時に安定して固定できるかも確認する必要があります。図面上では理想的な基準でも、溶接後の形状では加工機に固定できなかったり、クランプによってワークが変形したりする場合があります。特に薄板構造や大型フレームでは、固定方法が加工精度へ影響する可能性があります。
また、加工基準と検査基準をできるだけ整合させることも重要です。加工時には底面を基準にしているのに、検査時には別の未加工面から寸法を測ると、測定結果の解釈が難しくなります。設計、加工、検査で共通の基準を持つことで、寸法不良が発生したときの原因も追跡しやすくなります。
位置決め用の穴を基準とする方法もあります。例えば、完成品を別部品へ取り付ける際に二つの穴で位置が決まるのであれば、その穴を中心として他の加工位置を管理する方が機能上合理的な場合があります。ただし、どの穴を基準にするか、穴径と位置公差をどう設定するかは、組立方法との整合を確認する必要があります。
溶接後加工の依頼では、「この寸法はどこから測ればよいか」が一目で分かる図面にすることが理想です。同じ寸法でも基準が変われば意味が変わります。複数の寸法を連続して積み上げるより、機能上重要な基準から直接位置を指示した方が、累積誤差を管理しやすい場合もあります。
加工先との打ち合わせでは、基準面を単に図面記号として指定するだけでなく、「この面が装置への取付面になる」「この二つの穴で相手部品と位置決めする」といった機能も共有すると、工程設計の意図が伝わりやすくなります。
溶接後の歪みそのものを完全になくすことは難しくても、基準を明確にしておけば、歪んだ状態からどこを削り、どこを残して完成形状を作るかを判断できます。溶接後加工の精度を安定させるうえで、基準面と基準位置の設定は中心的な役割を持ちます。
確認事項3|溶接歪みを見込んだ加工代と寸法公差を設定する
溶接後加工を成功させるためには、仕上げ加工する部分に十分な加工代が残っていることが重要です。溶接後に面を削って平面を作ろうとしても、溶接歪みが加工代を上回っていれば、一部を削っても別の部分が削れず、必要な面を形成できない可能性があります。
例えば、長い板の上面を溶接後に全面切削する設計で、板が弓状に反ったとします。加工代が少なすぎると、高い部分だけが先に削れ、低い部分には工具が届きません。低い部分まで削ろうとすると、完成寸法を下回る可能性があります。
そのため、仕上げ面には溶接後の変形量を考慮した余裕を設ける必要があります。ただし、必要な加工代は製品の大きさ、板厚、材質、継手形状、溶接量、溶接順序、拘束条件などで変わるため、一律の数値を当てはめるのは適切ではありません。類似品の実績や加工会社の知見を踏まえて決めることが現実的です。
加工代を大きくすれば安心とも限りません。削る量が増えるほど加工時間が増え、材料の内部応力が解放されることで加工途中に形状が変化することもあります。薄い部材では、片側から大量に削ることで新たな反りが生じる場合もあります。そのため、溶接歪みへの余裕と、加工しやすさの両方を考慮する必要があります。
寸法公差についても同じです。設計上必要な公差と、単に慣例で設定された厳しい公差を分けることが重要です。溶接構造物のすべての寸法へ高精度な公差を付けると、不要な後加工や矯正が増える可能性があります。
例えば、装置との取付面や軸受穴の位置には高い精度が必要でも、補強板の外形位置や溶接部周辺の外形寸法には同じ精度が必要とは限りません。重要寸法を明確にし、それ以外の寸法と区別することで、加工会社も重点的に管理すべき部分を判断しやすくなります。
溶接ビードと加工面の位置関係にも注意が必要です。加工面の近くに溶接部がある場合、加工範囲と溶接形状が干渉しないかを確認します。溶接部を加工して所定形状にする設計なのか、溶接部を残したまま周辺だけを加工する設計なのかでも工程は変わります。
穴加工でも加工代の考え方は必要です。溶接前に下穴を設けておく場合、溶接後の位置ずれを考慮して、最終穴径まで加工できる余地を確保しなければなりません。下穴径が最終径に近すぎると、溶接後に穴位置がずれた際、仕上げ加工を行っても元の穴が一部残る可能性があります。
反対に、下穴を小さくしすぎると後加工量が増えます。穴数が多い部品では加工時間への影響も大きくなるため、どこまで事前加工するかを加工会社と調整するとよいでしょう。
さらに、溶接後に歪み修正を行うのであれば、その工程も加工代の設定に影響します。どの段階で形状を確認し、必要に応じて修正し、その後どれだけ削るのかを工程として整理しておく必要があります。
部品加工を依頼するときは、「図面寸法どおりに作ってください」とだけ伝えるのではなく、加工前状態から完成状態までの余裕を設計することが重要です。溶接後加工では、完成寸法だけでなく、完成寸法へ到達するための加工代そのものが品質を左右します。
確認事項4|溶接と機械加工の工程順序を確認する
溶接後加工では、各工程をどの順番で行うかによって最終精度が変わります。特に、複数回の溶接と複数回の機械加工が混在する製品では、工程順序を図面や工程資料で明確にしておくことが重要です。
基本的には、最終精度を要求する部分を、大きな変形要因となる溶接工程より後に仕上げることを検討します。しかし、製品形状や加工設備によっては、すべてを最後に加工することができません。そのため、荒加工、組立、溶接、必要に応じた歪み修正、中間加工、追加溶接、仕上げ加工といった工程を組み合わせる場合があります。
注意したいのが、仕上げ加工後に追加溶接を行うケースです。せっかく高精度に加工した面や穴でも、その近くに追加溶接を行えば熱影響によって位置関係が変化する可能性があります。図面変更や現場判断で補強板を追加するような場合には、すでに仕上げた重要部がどこにあるかを確認する必要があります。
溶接順序そのものも変形へ影響します。一方向へ連続して溶接する場合と、位置を分散しながら施工する場合では、変形の傾向が異なる場合があります。設計担当者が細かな溶接手順まで指定する必要がない案件でも、寸法精度上重要な部分があることは加工会社へ共有しておくべきです。
大型構造物では、仮付け段階で寸法を確認することも有効です。すべての溶接を完了してから重大な位置ずれが判明すると、修正が難しくなります。仮組みや仮付けの段階で対角寸法、主要面の位置、開口寸法などを確認すれば、大きなずれを早期に把握しやすくなります。
必要に応じて溶接後に歪み修正を行う場合もあります。ただし、修正方法によって材料や溶接部へ影響を与える可能性があるため、材質、構造、要求品質を踏まえて適切な方法を選定する必要があります。設計側から一律に修正方法を指定するのではなく、加工会社と条件をすり合わせる方が安全な場合があります。
熱処理を工程に含める場合にも注意が必要です。材料や製品によっては、溶接後の応力低減などを目的として熱処理が検討されることがありますが、必要性や適用条件は材質、板厚、用途、適用規格などによって異なります。また、熱処理によって寸法が変化する可能性もあるため、高精度な仕上げ加工との順序を確認しなければなりません。
加工設備の制約も工程順序を左右します。溶接後の構造物が大きすぎて加工機に載らない場合、構成部品の段階で必要な加工を行い、組立時の治具や位置決め構造によって精度を確保する方法を検討することになります。逆に、完成品を加工できる設備があるなら、溶接後に基準面や穴をまとめて加工することで、相対位置精度を確保しやすい場合があります。
したがって、部品加工を依頼する際には、加工会社が保有する設備能力と工程設計を早い段階で確認することが重要です。最大加工寸法だけでなく、ワーク重量、固定方法、工具アクセス、測定方法なども実際の加工可否へ影響します。
工程順序を決めるときは、単純に加工コストを抑えるだけではなく、「最後にどの工程を実施した後の状態を完成品とするか」を明確にします。完成直前に大きな熱入力や変形要因が残っていると、高精度加工を早い段階で行った意味が薄れる可能性があります。
設計段階から溶接と加工の順序を想定しておけば、加工会社からも代替案を出してもらいやすくなります。部品加工を依頼する側と加工する側が工程を共有し、完成精度へ影響する作業を整理することが、手戻り防止につながります。
確認事項5|溶接後の測定方法と検査基準を決める
最後の確認事項は検査です。溶接後加工では、加工精度だけでなく、完成状態をどのように測定して合否判定するかを事前に決めておくことが重要です。
図面に寸法公差が記載されていても、測定方法が異なれば結果に差が出ることがあります。特に大型の溶接構造物では、基準面の設定方法、ワークの置き方、支持位置などが測定結果へ影響する場合があります。
例えば、長いフレームの平面度を確認する場合、加工時と検査時で支持条件が大きく異なると、自重によるたわみを含んだ異なる状態を測定することになります。そのため、どの姿勢で使用される製品なのか、どの位置で支持されるのかを考慮して検査条件を決める必要があります。
穴位置についても、単純な端面からの距離を測定するだけでよいのか、基準穴や基準面に対する位置関係を確認する必要があるのかを整理します。組立時に重要なのが二つの穴の相対位置であれば、それを確認できる検査方法が必要です。
同軸性、平行度、直角度など、形状や姿勢に関する要求がある場合には、加工会社がどの設備と方法で確認するのかも事前に確認しておくと安心です。製品サイズによっては、一般的な測定器だけでは直接測定しにくい場合もあります。
また、すべての寸法を同じ重要度で検査する必要はありません。組立や機能へ直接影響する重要寸法を明確にし、重点的に記録する方が品質管理を行いやすくなります。初回品では詳細に測定し、量産品では工程能力や実績を踏まえて管理方法を調整する考え方もあります。
溶接後加工品では、溶接外観や加工寸法だけでなく、完成後の全体形状も確認することが重要です。各部分の寸法が個別に公差内でも、全体のねじれや反りが組立へ影響する可能性があります。
例えば、四隅に取付面があるフレームでは、四つの取付部がそれぞれ図面高さに近くても、全体としてねじれていると設置時に一部が浮く可能性があります。こうした製品では、個別寸法だけでなく、共通基準に対する各取付部の関係を確認する必要があります。
検査記録の必要性についても依頼時に決めておきます。検査表が必要なのか、重要寸法だけ記録すればよいのか、出荷前写真が必要なのかなどを明確にしておけば、納品時の認識違いを防ぎやすくなります。
測定箇所が多い場合には、図面上の番号と検査記録を対応させる方法も有効です。「どこの寸法を測った結果なのか」が明確であれば、後日組立で問題が発生したときにも確認しやすくなります。
溶接後加工では、「加工できたこと」と「要求した状態になっていること」は別です。部品加工の依頼時点で検査方法まで決めておくことで、加工会社側も完成判定を明確にでき、発注側も受入時の判断を行いやすくなります。
部品加工を依頼するときに加工先へ伝えるべき情報
溶接後加工を含む部品を依頼するときは、完成図面だけでなく、加工会社が工程を検討するために必要な情報をまとめて伝えることが重要です。
まず明確にしたいのが完成品の用途です。具体的な製品名を伝える必要がなくても、「機械のベースとして使用する」「回転軸を支持する」「別部品を位置決めして取り付ける」といった機能を共有するだけで、加工会社はどこが重要なのか判断しやすくなります。
次に、溶接前部品と完成品の関係を明確にします。支給部品を溶接するのか、材料調達から加工会社へ依頼するのか、機械加工部品と板金部品を組み合わせるのかによって管理範囲が変わります。
材質や板厚、素材形状も必要です。同じ形状でも材料特性によって溶接条件や加工方法は変わります。材質が不明確な状態では、加工会社が適切な工程を判断できません。
溶接部については、継手位置、必要な溶接範囲、完成形状などを図面で分かるようにします。設計上必要な溶接条件がある場合には明確に指示し、加工会社側の施工方法へ委ねる範囲と区別します。
加工面については、完成寸法だけでなく、どこが溶接後加工なのかを分かりやすくします。特に複数の加工面がある場合、同一段取りで加工する必要がある面や、相対位置が重要な穴を共有しておくと工程設計に役立ちます。
基準についても明確にします。完成品の取付基準、加工基準、測定基準が一致しない場合には、それぞれの意味を整理します。どこを基準にしたときにどの寸法が重要なのかが分かれば、加工会社も歪み修正や加工代の配分を判断しやすくなります。
重要寸法は優先順位を伝えることも有効です。すべての寸法が同じ重要度ではない製品では、「この取付面とこの穴の位置関係を最優先する」といった情報があると、加工上の判断を行いやすくなります。
また、組立相手の情報も可能な範囲で共有すると有効です。例えば、位置決め穴へピンが入るのか、ボルト穴として使用するだけなのかによって必要精度は変わります。軸受が入る穴なのか、単なる配線通過穴なのかでも管理方法は異なります。
納品時に必要な状態も伝えます。溶接後の表面処理を含むのか、加工面を保護した状態で納品するのか、検査記録を添付するのかなど、最終工程まで整理しておくと追加作業を防げます。
特に表面処理を行う製品では、表面処理工程が寸法や接触面へ影響しないかを確認する必要があります。精密なはめあい部や取付面について、どの段階の寸法を完成寸法とするのかを明確にします。
部品加工の依頼では、加工会社へ細かな作り方をすべて指定することが必ずしも最善とは限りません。重要なのは、完成品として満たすべき条件と、変更してはいけない要求事項を明確に伝えることです。そのうえで、実際の設備や加工経験を持つ加工会社から工程提案を受けることで、無理のない製造方法へつなげやすくなります。
溶接後加工の手戻りを減らすための実務上のポイント
溶接後加工の手戻りを減らすには、発注前の図面確認だけでなく、初回製作の進め方も重要です。特に新規設計の溶接構造物では、実際にどの程度変形するかを設計段階で完全に予測することは容易ではありません。
初回品では、溶接前、仮付け後、溶接後、加工後という主要工程で寸法を確認すると、どの工程でどの程度変形したかを把握しやすくなります。これにより、次回以降の加工代や治具、溶接順序を改善する材料が得られます。
量産を想定している場合には、初回品の結果をその場限りにせず、次回の製造条件へ反映できる形で残すことが重要です。例えば、溶接後に特定方向へ変形する傾向が分かれば、治具や加工代、工程順序を見直す判断材料になります。
図面改訂の管理にも注意が必要です。溶接部品は複数の部品図、組立図、加工図が関連するため、一部だけを変更すると工程間で情報が不一致になることがあります。完成寸法を変更した場合には、溶接前部品の寸法や加工代にも影響しないかを確認します。
現場での変更内容も記録することが大切です。実際の製造では、加工会社との打ち合わせによって基準位置を変更したり、加工順序を調整したりすることがあります。その変更が図面へ反映されていないと、再発注時に以前の条件へ戻ってしまう可能性があります。
設計担当者と購買担当者が分かれている場合には、加工上の注意事項が価格や納期条件だけに埋もれないようにする必要があります。部品加工の依頼書や図面に、溶接後加工で重要となる条件を明記し、加工会社の技術担当者まで情報が届く状態を作ることが重要です。
加工会社を選定するときも、単純な切削加工能力だけではなく、溶接から機械加工までの工程を理解しているかを確認するとよいでしょう。溶接と加工を別々の会社へ依頼する場合には、どちらが最終寸法を保証するのか、どの状態で引き渡すのかを明確にします。
例えば、溶接会社から加工会社へワークを渡す場合、溶接後の外形寸法や歪み量が想定を超えていると、加工会社では修正できないことがあります。加工会社が必要とする加工代や基準面の状態を、溶接側にも事前に共有しておくことが重要です。
一社で溶接から加工まで対応する場合でも、工程間の情報連携を確認することには意味があります。溶接担当と機械加工担当がそれぞれ図面をどのように解釈しているか、重要寸法が共通認識になっているかを初回製作時に確認すると安心です。
また、加工後に問題が見つかった場合は、不良寸法だけを見るのではなく、溶接前からの工程を確認します。溶接変形なのか、加工基準の設定なのか、固定方法なのか、図面寸法の設定なのかによって対策は異なります。原因を工程までさかのぼって整理することで、単純な再加工だけではない恒久対策につながります。
部品加工の依頼では、図面を送って納品を待つだけではなく、製造工程に必要な情報を加工会社と共有することが品質安定化につながります。特に溶接後加工では、実物が完成するまで見えにくい歪みや基準ずれがあるため、初回品の記録を残して次回へ活用する考え方が有効です。
現場で実際に部品を設置した際の情報も重要です。図面上は合格でも、現場で取付穴が合わせにくかった、相手部品との隙間が想定より大きかった、据付時の調整に時間がかかったといった情報は、次回設計や加工条件の改善につながります。
このため、加工会社の検査記録だけではなく、受入時や組立時の写真、設置位置、修正内容などを紐付けて管理できると、加工品質を継続的に改善しやすくなります。製造側の記録と使用現場側の記録をつなげることで、「図面上の寸法」と「実際の使われ方」の両方から問題を確認できます。
まとめ|溶接後加工は基準・加工代・工程・検査まで一体で依頼する
部品加工の依頼で溶接後加工を成功させるには、完成寸法だけを図面に記載するのではなく、溶接によって形状が変化することを前提として工程全体を設計することが重要です。
まず、どの部分を溶接前に加工し、どの部分を溶接後に仕上げるのかを明確にします。完成状態で高い位置精度が要求される穴や取付面については、溶接後の仕上げ加工が適している場合があります。一方、完成後には工具が届かない部分などは、事前加工が必要です。
次に、加工基準を明確にします。素材端面や外形を何となく基準にするのではなく、完成品として重要な取付面、位置決め穴、中心線などから基準を考えることが重要です。加工基準と検査基準を整合させることで、完成品の評価もしやすくなります。
さらに、溶接歪みを考慮した加工代が必要です。加工代が不足すると、溶接後に仕上げ加工を行っても必要な面を作れない可能性があります。ただし、加工代を過剰に増やせばよいわけではないため、製品形状や過去の実績を踏まえて加工会社と調整します。
工程順序も重要です。高精度に仕上げた後で大きな溶接を行えば、再び変形する可能性があります。溶接、歪み修正、荒加工、仕上げ加工などをどの順番で実施するかを整理し、最後の変形要因より後に重要部を仕上げられる工程を検討します。
そして、完成後の検査方法を事前に決めます。どの基準から、どの姿勢で、どの寸法を測定するのかを明確にしておけば、加工側と発注側で合否判定が食い違うリスクを減らせます。
溶接後加工で問題が発生したとき、「溶接が悪い」「加工が悪い」と単純に分けるだけでは原因を特定できないことがあります。溶接前部品の精度、仮付け、溶接順序、変形、歪み修正、加工基準、固定方法、検査方法まで連続した工程として確認することが重要です。
部品加工を依頼する実務担当者にとっては、すべての加工方法を自分で決める必要はありません。むしろ、完成品で必要となる機能、重要寸法、基準、組立方法を正確に伝え、具体的な製造工程について加工会社の知見を活用することが効果的です。
初回製作では、図面だけでなく実際の溶接後状態や加工後状態を確認し、その結果を次回の図面や工程へ反映させます。この繰り返しによって、加工代や基準位置、加工順序を最適化しやすくなり、再製作や現場修正の削減につながります。
さらに、部品が実際に設置される現場では、加工図面や検査表だけでは分からない情報が発生します。どの場所に取り付けた部品なのか、設置時にどのような調整を行ったのか、施工後に位置や状態がどうなっているのかを写真とともに記録しておけば、次回製作や不具合解析にも活用できます。
こうした現場情報の管理には、現場写真・位置情報・施工記録を管理できるLRTK Phoneを活用できます。加工品の設置位置と現場写真を記録しておくことで、製造時の検査情報と実際の施工状態を照合しやすくなります。溶接後加工品の品質を図面上の寸法管理だけで終わらせず、現場でどのように使用されたかまで記録することで、次回の部品加工依頼や設計改善につながる情報を蓄積できます。
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